工場の破産から8周年、550万ドルの支払いを待つ労働者に対し、s.Oliverは10万ユーロを支給。しかし、ユニクロはどこへ?

 インドネシアの縫製工場であるジャバ・ガーミンドの倒産から、今日で8年目を迎えました。この工場は、ユニクロや、ドイツの衣料品グループであるs.Oliverなどのグローバルブランドから生産を受注していた工場です。服を作っていた元労働者たちには、法的に支払われるべき退職金550万ドルが今も支払われていません。s.Oliverは今週に入り、かつて工場で働いていた縫製労働者2000人に対し、10万ユーロを支給しました。

 労働者たちは、2015年4月にジャバ・ガーミンドが倒産して以来、彼らに支払われるべき550万ドルを求めて闘ってきました。ジャバ・ガーミンドの元労働者は、s.Oliverだけでなく、ユニクロのためにも生産していました。親会社であるファーストリテイリング傘下のユニクロは、世界で最も資産価値のある衣料品ブランドの一つであるにもかかわらず、労働者に対して負っている債務に対し、いまだに支払いを拒否しています。550万ドルという金額を比較の中で見てみると、2023年4月現在、ファーストリテイリングの時価総額は758億4000万ドルで、ユニクロのブランド価値は約100億ドルです。

 労働組合PUK SPAI Federasi Serikat Pekerja Metal Indonesia(FSPMI)の労働者代表で、以前ジャバ・ガーミンドにいたテディ・セナディ・プトラは、次のように述べています:
「S.Oliverは大幅に遅れて支払いを行いましたが、私たちが支払われるべき金額には到底及びません。ユニクロは一体どこにいるのでしょう?世界で最も裕福なブランドの1つは、私たちが服を作り、利益を生み出したにもかかわらず、私たちに背を向け続けています。ユニクロはエシカルな企業であるかのように装っていますが、私たちに支払うべきものを支払おうとしていません!8年経った今、私たちの正義はどこにあるのでしょう?」。

 ジャバ・ガーミンドの元労働者たちは、インドネシアで裁判を行い、彼らに支払われるべき金額を確認するなど、あらゆる手段を使って、彼らに支払われるべきお金を手に入れようとしてきました。しかし、裁判所には、ファーストリテイリングのような国際企業に支払いを強制する力はありません。
 2019年10月、クリーン・クローズ・キャンペーンとインドネシアの労働組合FSPMIは、ファーストリテイリングとs.Oliverの両社が加盟していたマルチステークホルダー・イニシアティブ(MSI)であるFair Labor Association(FLA)に第三者申し立てを行いました。s.Oliverはその後FLAを脱退し、現在はFairwear Foundationに加盟しています。

 2021年7月にはFLAの調査結果が発表されました。その報告書はファーストリテイリングとs.Oliver、そして同工場から調達していた他のブランドに対し、労働者のための救済基金に支払うよう勧告しました。この勧告を故意に無視したにもかかわらず、ファーストリテイリングはいまだにFLAの正会員であり続けています。 
 FLAが加盟ブランドのひとつに自らの勧告に沿った行動をとらせることができなかったことは、マルチステークホルダー・イニシアティブが倫理的実践を支持することに関して抱えている問題の一例を示しています。任意に基づくイニシアティブには強制力がなく、適切に労働者の権利を保護することができないのです。

 ジャバ・ガーミンドの元労働者たちの今も続く困難は、退職金の未払い問題と、縫製業界で正義を求めて闘う際に労働者が直面する極めて難しい課題にスポットライトを当てています。インドネシアを含む多くの生産国では現在、国の社会的保護システムは退職金を十分にカバーできるほど強固なものではありません。生活できない賃金が業界全体の標準であり、衣料品労働者がお金を貯蓄に回す余裕はほとんどありません。法律で義務付けられた退職金はこのギャップを埋め、労働者が職を失った場合に極めて重要なセーフティネットとして機能します。退職金の必要性は国の法律に記されていますが、それにもかかわらず企業による退職金の「盗難」が世界中で何十万人もの労働者に影響を与えており、コロナ禍以来、その数は急激に増加しています。
 ブランドが正しいことをすると信じているだけでは、うまくいかないのです。クリーン・クローズ・キャンペーンは、すべてのブランドに対し、賃金と退職金の「盗難」を確実になくすために、拘束力のある協定である「Pay Your Workers」に署名するよう呼びかけています。Pay Your Workers協定には、グローバルな退職金保証基金の設立が含まれており、将来、ジャバ・ガーミンドの労働者のように、衣料品労働者が支払われるべき金銭のために争うことを強いられることがないようにするものです。Pay Your Workersキャンペーンに参加しているインドネシアの労働組合は、s.Oliverに直接交渉するよう要請していますが、残念ながらs.Oliverは交渉を拒否しています。

 クリーン・クローズ・キャンペーンのキャンペーン担当者であるイラナ・ ウィンテルシュタインは、次のように述べています。「この事件は、衣料品産業におけるアカウンタビリティーの欠如と、現在進行形の企業の不処罰を示しています。ユニクロがそうしたように、ブランドが労働者に背を向け、サプライチェーンで労働者を不当に扱ったことから逃れるようなことがあってはなりません。また、労働者が合法的に得たお金を受け取るために8年間も闘わなければならないようなことがあってはならないのです」。